日本とオランダの洋上風力発電
日本とオランダの動向について、下記をご覧ください。
日本は洋上風力発電の環境に恵まれ、特に北部の沖合に広がる深海では、高い潜在力が見込まれているます。世界風力エネルギー会議(GWEC)は、浅瀬の固定底プロジェクトで約128GW、より深い海域での浮体式洋上風力発電では424GWの発電容量を見込んでいます。
日本は、2050年までのカーボンニュートラルの一環として、2040年までに30GWから45GWの洋上風力発電の設置を目指しており、経済産業省も2030年までに10GWという中間目標を設定しています。
丸紅主導のコンソーシアムは、秋田県の能代港(84.0MW)と秋田港(54.6MW)で、それぞれ2022年後半と2023年の初めにに日本初の大規模商業用洋上風力発電事業を開始しました。またJERAとグリーンパワーインベストメントは、北海道の石狩湾プロジェクトに14基のシーメンス・ガメサ製タービン(8MW)を納入し、2024年1月に操業が開始されました。
第1ラウンド
2021年12月、日本政府は1.7GW規模の固定式洋上風力発電3プロジェクトで第1回商業入札を実施しました。三菱商事エナジーソリューションズ、シーテック、三菱商事のコンソーシアムがこれらすべてのプロジェクトを落札しました。
- 由利本荘港湾エリア(819MW)
- 能代・三種・男鹿港湾エリア(478.8MW)
- 銚子港湾エリア(390.6MW)
これら3つのプロジェクトのBoP(Balance of Plant)契約会社は鹿島建設とヴァンオールです。
2022年4月、浮体式洋上風力発電プロジェクト(16.8MW)は、単独入札であった五島浮体式洋上風力コンソーシアムに落札されました。
- 戸田建設、ENEOS再生可能エネルギー、大阪ガス、国際石油開発帝石株式会社、関西電力、中部電力がさまざまな課題をクリアーにし、2026年の運転開始が予定されています。8基(2.1MW)のタービンは日立製です。
第1ラウンド終了後、日本政府は、より幅広い入札参加者の参加を促すための規制改正を行うため入札を一時停止しました。
第2ラウンド
2023年6月、4ヶ所1.8GWの入札が行われました(すべて底面固定型)。2023年12月に以下の3つのコンソーシアムが選定されました。
- JERAは秋田県男鹿・片上・秋田沖の315MW風力発電プロジェクトのコンソーシアムを率いています。パートナーはJパワー、伊藤忠商事、東北電力。ヴェスタスは、モノパイル基礎に設置される21基(15MW)のタービンを供給しています。
- 住友商事は、東京電力リニューアブルパワーと共同で、長崎県江の島沖に420MWの風力発電所を建設。ヴェスタス社は、モノパイル基礎に設置される28基(15MW)のタービンを供給しています。
- 三井物産は、新潟県村上胎内沖の684MW風力発電所を主導。パートナーはドイツのRWEと大阪ガス。Haliade-Xのタービン38基(18MW)はモノパイル基礎に設置されます。
第2―Aラウンド
日本自然エネルギー株式会社(2024年4月に改称)、スペインのイベルドローラ社、東北電力のコンソーシアムは、秋田県八峰町・能代市沖の用地を獲得しました。375MWの洋上風力発電所には、モノパイル基礎に25基のヴェスタス社製(15MW)タービンが設置されます。建設は2026年に開始され、2029年のフル稼働を予定しています。
第3ラウンド
2024年7月まで、2つのサイト(いずれも底面固定型)で1,065MWの容量を対象とした政府のオークションが実施され、2024年12月に以下のコンソーシアムが選定された。
- JERA、グリーンパワーインベストメント、東北電力は、青森南(615MW)プロジェクトを主導し、海岸から6km未満に設置となり、商業運転開始予定日(COD)は2030年6月です。
- 丸紅、関西電力、BPイオタ、東京ガス、丸高は、山形湯沢町(450MW)プロジェクトは、海岸から5km未満の地点で、2030年6月に商業運転を開始する予定です。
課題と展望
日本での洋上風力発電プロジェクトが国内からの支持を得るためには、地域経済への貢献が求められています。このため、外国企業にとって日本企業との長期的なパートナーシップ構築が最も重要な戦略となります。
日本の洋上風力発電産業のサプライチェーンは、他国に比べて相対的に断片的で分散しており、大きな課題となっています。また浮体式風力発電の巨大な潜在力の認識を広めることも大きな課題の一つです。2024年、日本の商社と開発業者は、洋上風力の革新と関連する商業的機会を加速させる目的で、「浮体式洋上風力技術研究組合」(FLOWRA)を設立しました。
オランダの北海における排他的経済水域(EEZ)での洋上風力発電の開発は非常に好条件に恵まれています。比較的浅い水深、砂地の海底、強風といった自然条件だけでなく、海洋工事業社や設備供給業者による強力なサプライチェーン、整備が整った港湾施設、そして何よりも、オランダの洋上風力市場への長期的な投資を誘引するため、投資家の信頼を獲ることができる安定した規制枠組みも重要な役割を担います。
とはいえ、オランダは2007年に洋上風力発電に早期参入したものの、市場発展が本格的に始まったのは、より積極的で強力的な規制枠組みに切り替えた後でした。この新しい枠組みの下、設置された洋上風力発電の容量は、2016年までのわずか1 GWから、2023年末には4.7 GWに急増しました。これは、現在のオランダの電力消費量の約16%に相当します。
オランダ政府は、海洋空間計画における洋上風力発電区域の積極的な指定と、それに続く複数年の入札方式(ロードマップ)を公表することで、プロジェクト開発者の長期的な投資見通しを可能にしています。また、国営機関がEIA(環境影響評価)や許可準備(RWS)、サイト調査や入札調整(RVO)、および陸上HV(高電圧)グリッド接続(Tennet)を担当することで、開発初期のリスクとコストを削減し、プロジェクト開発者のビジネスケースを支援しています。
現在、オランダは大規模な洋上風力発電プロジェクトの迅速な展開、競争力の高い(補助金ゼロ)サイト入札による驚異的なコスト削減、そして一貫した技術革新の実績によって成熟した洋上風力市場へと発展しました。2030年以降を見据え、設置容量をさらに大幅に増加させる計画を立てており、2033年までに21 GWという大規模な設置容量を目指しています。これは、現在のオランダの電力消費量の約75%に相当します。
オランダは伝統的に、エンジニアリングや製造から建設・設置作業に至るまで、洋上風力発電分野の幅広い事業や海事企業、研究機関の拠点となっています。プラントコスト削減における継続的なイノベーションのおかげで、オランダのサプライチェーンは、国際的なパートナーに対し、さまざまな条件下で、洋上風力発電の課題への最新技術による解決策を提供できることで、評価されています。さらに、オランダはその専門知識を共有しながら、国際的な強力なパートナーシップを築き、世界中、特に日本におけるローカルサプライチェーンの発展のためのサポートを熱望しています。